東京高等裁判所 昭和46年(ネ)2318号 判決
更に控訴人は、仮りに前記売買契約書中の買主の住所の記載が脇野によって訂正されたのが、脇野が被控訴会社の代表取締役を辞任した後であったとしても、控訴人は右辞任の登記を知らなかったことについて正当な事由があるから、被控訴人は商法第一二条により脇野の辞任を以て控訴人に対抗することができないことにより、または表見代表取締役の法理により、脇野の右行為につきその責に任ずべきである、と主張する。しかし、そもそも商法第一二条にいう正当の事由とは例えば交通杜絶等登記を知ろうとしても知り得ない客観的障害をいうのであって、控訴人が主張するような当事者についての主観的事情を含まないものと解すべきであるから、右前段の主張は既にこの点において失当であるのみならず、右一、2認定の諸事実によれば、控訴人は右売買契約書の記載の訂正がなされた昭和四二年六月二〇日頃、脇野が同年一月五日被控訴会社の代表取締役を辞任し、その登記もなされ、従って脇野は被控訴会社の代表取締役としての権限を有しないことを知っていたものと認めるのを相当とするから、右の主張はいずれにしても理由がない。
(白石 岡松 川上)